初心者におススメのマハーバーラタ!
略版なので読みやすい。
一読目はアルジュナが出てくるところまで飛ばして読んだ方が挫折せずにすみます。隅々まで読むのはハマってから!
(amazonアソシエイトです)


マハーバーラタ(上) (第三文明選書)


マハーバーラタ(中) (第三文明選書)


マハーバーラタ(下) (第三文明選書)

ガッツリ読める推しマハーバーラタです。ただし未完。(8巻で終わってしまった……)
ナラ冠はこの本をもとにしています。

原典訳マハーバーラタ〈1〉第1巻(1‐138章) (ちくま学芸文庫)
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シキミヤ

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白銀の守護者よ、ナラを冠せよ 十二年の禁欲 コラム#1

コラム1

せっかくマハーバーラタを元にしたノベルを作ったからには、やっぱり原典を解説しなきゃね! ってことで軽く紹介していきましょう。「ふーんこれがナラ冠の元ネタか~」くらいの軽い気持ちで読んでもらえるように、できるかぎり簡単に! 短く! 書いていきますね。

◆概要
◇ヒンドゥー教の聖典
ヒンドゥー教といえば、牛を食べたらいけない宗教ですね。マハーバーラタ、またその中でも『バガヴァット・ギーター』という、主人公アルジュナと彼を導く神さまクリシュナの問答は聖典として、今なおヒンドゥー教徒に信仰されています。
恐ろしいのは、別にヒンドゥー教を知らなくてもあまりにもエンターテイメント的に面白いところ。ふっっっっっつーーーーーに物語として完成されすぎている。ストーリー紹介はのちほど。

◇古い叙事詩
いつ書かれたのかははっきりしてないですが、だいたい紀元前4世紀~起源後4世紀の間に今の形に整えられていったと推察されています。大昔の物語が口伝で伝えられるもんだから、ローカル改変が無数にあり、地域や時代によっていろんなマハーバーラタがあります。だから"推しマハーバーラタ"なんて言葉が生まれるわけですね。上村訳をよろしく!

◇作者
マハーバーラタを語ったのは聖者ヴィヤーサと言われています。
彼は弟子のヴァイシャンパーヤナにこの物語を伝え、ヴァイシャンパーヤナが人々に語り継いでいったのです。
また山際版では、ヴィヤーサは文字が書けないために、ガネーシャという象の頭をした神さまに口述筆記を依頼したとされています。ただしガネーシャは「君が語り続ける間はちゃんと書くけど、もし言葉に詰まって筆が止まってしまったら、それ以上は書かないゾウ」と条件を出しました。それに対してヴィヤーサは「OK。ならば貴方は、私が語る言葉の意味をきちんと理解するまで筆を進めてはならない」と約束させます。そして彼はわざと難しい言い回しを用い、ガネーシャが解釈に悩んでいる間に、話の続きを考えたのです。
ちなみに、ヴィヤーサはアルジュナのお祖父ちゃんです。

◇世界観
・古代のインドが舞台。霊峰ヒマーラヤに見守られた大陸の中に、大小いくつもの国々が存在します。中でもクルの一族は最大勢力と言っても過言ではない王家で、大国ハスティナープラを擁します。アルジュナも一時期はここで王子様をやっていましたが、独立してインドラプラスタという国を作りました。
・人々は生まれによって定められている身分に従って生活しています。代表的な4つは身分が高い順にバラモン:僧、クシャトリヤ:王族・戦士、ヴァイシャ:一般市民、シュードラ:隷属民で、アルジュナはクシャトリヤです。
・この世界には人間や動植物だけでなく、アスラやラークシャサ(羅刹)、ダーナヴァなどの魔類や、シヴァ・ヴィシュヌ・ブラフマ―などの神々が存在します。羅刹はその辺に普通にいて、人間をとって食ったり退治されたり。神々は基本的に天界にいますが、気分しだいでほいほい下界に降りてきます。マハーバーラタ作中でもアルジュナを祝福したり、悪党に加護を与えたり、呪ったり、無茶ぶりしたり。他にはナーガとか、天女とか、聖仙という仙人みたいなものとかいろいろいます。基本的にファンタジーな世界観です!
・戦いにおいては弓が主流で、弓が得意でないと最強の戦士になるのは難しいです。他には剣、棍棒、槍、幻術などがあり、珍しいのだと斧(パラシュラーマ・ナラ)、円盤(クリシュナ)、犂(バララーマ)など。また、戦車、馬、象に騎乗するか徒歩で戦います。
・魔王などの巨悪はいないので、物語は必然的に人間同士の争いを描いていくことになります。

◆ストーリー&キャラ
◇あらすじ!
……については、実は第二話「ヴァーラナーヴァタの村娘」を公開したあとに詳しく書きたいなと思っています……。
ただ簡単に言うと、王位を巡っていとこ同士で争う大惨事を描いたのがマハーバーラタです。
マハーバーラタと並んでインド二大叙事詩といわれる『ラーマーヤナ』は、勇者が姫を助けるために魔王を打倒するタイプの物語ですが、一方マハーバーラタは人間同士、親族同士のお家騒動なので、方向性が全然違う!

◇鬱シリアス好きにおススメ
『ナラ冠 十二年の禁欲』はかなりコミカルな作風ですが、あれは作中でも珍しく平和な時期の話で、基本的にマハーバーラタはシリアスです。
ナラ冠読んで「明るい作風なのかなー」ってつもりでマハーバーラタ読むと死ぬのでお気を付け下さい。
アルジュナも現状だと明るい能天気青年ですけど、今はただ平和ボケしてるだけです。戦争でどんどんメンタル削れていくからよろしくな!

◇キャラが濃い
ウルーピーが突然アルジュナを水中に引きずり込んで竜宮に攫い「愛してくれなきゃ死にます♡」とはちゃめちゃに押しの強い求愛してくるの、現代ラノベライズした萌えキャラ化だって思いました? 違います、原典もああなんです
アルジュナが人助けのため兄弟の逢瀬に立ち入って「お前は悪くないよ」と説得されるも頑固にセルフ追放されるくだり、ギャグシーンぶっこんできたなって思いました? 原典からしてああなんです。
マハーバーラタは出てくる人出てくる人、ひたすらキャラが濃すぎて性癖の坩堝かよといった様相です。

・正義の人、お人好し、善人、徳が高すぎて地面からちょっと浮いてる、でも心配性ですぐ嘆き、弟たちに守られまくりヘタレ属性の長男とか。
・力自慢で大食いで引くほど過激派ですぐ木を引っこ抜いて戦う、けど大好きな妻のためにお花摘んでくる可愛さを見せるお料理上手の次男とか。
・「アルジュナのいない世界など見ていても仕方ない」「妻子よりもアルジュナの方が大切だ」「アルジュナと永遠の友情を望む」などと主人公への寵愛が通常運転の親友兼神さまとか。
・好戦的でヤンキー気質で大口叩いてすぐ味方と喧嘩するくせ、実は一本筋の通った信念を持っててそれを曲げずに死んでいき、死後主人公との劇的な関係が明かされる宿敵とか。
・最低最悪の救いようのない悪党でこいつのせいで何万人と死んだ呆れ果てる邪悪なのに、悪だくみは結構失敗するわ、失敗した揚句主人公たちに助けられてショックすぎて「このまま餓死して死んでやる」とヘソ曲げて仲間に慰められる、ドジっ子泣き虫ヘタレ属性な諸悪の根源とか。
・もとは善良な人だったのにあれがこうしてああなってそうなるラスボスとか。

このへんのキャラは親友と宿敵以外『十二年の禁欲』には出ませんけど、そのうち落書きとかしたいですね! 好きなので!!!
※なおこのキャライメージはあくまでシキミヤがマハバを読んで抱いたイメージですので、実際のところは原典を読んでみてください。

◆(おまけ)マハーバーラタ関係の作品
今でも人気の物語で、ドラマ化や映画化されるなどしていますので、軽く紹介をば。ここは多少マハバ知ってる人むけかも??
◇mahabharat
2013年からインドで放送されていたマハーバーラタの大河ドラマ。マハバについて知りたいならこれが一番いいと思いますけど、めっちゃ長いので覚悟してください。米amazonで円盤が買えます。また、ストーリーはおおむね山際訳に近いですが、改変も多々あります。
◇アルジュンの大冒険
インド製のアニメ。マハバのキャラですが、ストーリーはマハバとはまったく関係ない。日本でも過去に放送されたことがあり、アルジュンの声優さんは江口拓也さん! 私は見たことないのでまた放送してほしいです。
◇Arjun: The Warrior Prince
ディズニー発、アルジュナを主人公としたアニメ映画。硬派で真面目な作りです。
寡黙で気真面目なアルジュナは、戦士として修業はよく出来たものの、本当に戦って人を殺すという段になると覚悟が決まらない。たびたび悩むことを繰り返しながら、誰かに願われ、あるいは誰かを守るため、戦うということに対して真摯に向き合っていく。
ストーリーは戦争の前で終わってしまいますが、きちんとアルジュナの成長の様子が描かれていよくまとまっています。ストーリーはマハバからそう大きく乖離してないですが、主眼が違うというかんじ。師匠であるドローナ先生がキーキャラクター。クリシュナがイケメン。
日本amazonでも輸入代行かなにかで買えますが、日本語字幕はないですよ。
◇バーフバリ
南インド発、伝説の英雄を描いた物語。日本でもかなり人気が出てロングランしたのですが、この元ネタのひとつがマハーバーラタです。バーフバリのPVでも見てみれば、マハーバーラタやナラ冠がどういう世界観なのか雰囲気つかめるかも。

◇極付印度伝 マハーバーラタ戦記
日本ではマハーバーラタが歌舞伎になりました。実は見れていないので感想は書けないのですが、出来が良いとの評判をよく聞きます。
アルジュナのライバルであるカルナが主人公で、キャラクター設定などかなり独自の改変がくわえられていますが、基本的には百王子と五王子のお家騒動なのは変わらないようです。
改変で一番びっくりするのはドゥルヨーダナ(百王子の長男)が女性になっていること。悪女としてすごく良いキャラしているらしいです。
◇新・伝統舞踊劇 幻想前夜2018~マハーバーラタより
こちらも日本発! ……やっぱり見れてないです!
こちらも歌や踊りで表現する舞台で、戦争の直前までを描いているそうです。現代劇っていうんですかね。感想を見ていると、そのスケールと迫力に圧倒されている方が多いようで、私も見たかったなあと思いつつ。日本だけでなく、アジア諸国で公演しているようです。

◆終わりに
マハーバーラタの紹介は以上でおしまいです。
少しは雰囲気を伝えられたでしょうか? もし用語など、ご質問あればどうぞ。
また、ナラ冠の続編を読んでいくうちにつかめてくる部分もあると思いますので、耳慣れないジャンルですが倦厭せずにプレイして頂けると嬉しいです。

次回、コラム#2は「第一話 ガンガーのウルーピー 解説」を予定しています。
宜しくお願いします!

※この解説は主に以下を参考文献としています。
 『原典訳マハーバーラタ』上村勝彦訳 ちくま学芸文庫
 『The Mahabharata』BIBEK DEBROY訳 PENGUIN BOOKS
 『マハーバーラタ』山際素男編訳 三一書房
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